開業までのステップ
新規開業と診療方針
新規開業の準備に入ると、新規開業の手続きに忙殺されてご自身の診療方針とちがう方向に行ってしまう場合があります。先生ご自身の今後の診療にかかわる重要な問題ですから方向性を見失わないようにしっかりとした診療方針をたてて下さい。
- 開業立地の選定
診療方針の決定にあたりどのような患者さんを対象に診療をするのかということを決める必要があります。開業立地の選定についても対象とする患者さんが来院する可能性の高い立地を選択することが必要です。
開業前の診療方針で選択した開業地が想定通りとは限りませんが少なくとも前提をもって選択した立地でなければ診療方針の修正も難しくなります。 - どんな診療をめざすのか
保険診療中心なのか自由診療中心なのか、両者バランスよく診療したいのか決めることが必要です。保険診療中心であれば患者さんをお待たせせずに診療していくことが必要となりますから、経営面から考えると1日平均患者数は多くすることが必要となります。
よって、歯科医師数、ユニット台数、診療時間に他の歯科医院よりも優位性をもった方針が重要です。
また、自由診療を中心とするなら1日平均人数はある程度抑えて患者さんの快適性を追及したような診療所を考えになったら良いと重います。個室仕様によるプライバシーの確保、最新の医療設備による高度医療、スタッフの接遇能力の高さ等診療所全ての項目に関係することがあります。 - 診療所規模の決定
診療方針によって、歯科医師数やユニット台数に違いがでるということは診療所の面積についても影響してきます。特に、テナント開業の場合には拡張の場合に制約があるので診療方針を意識して診療所規模を決定して下さい。 - まとめ
過去の開業事例からみると診療方針による開業立地の区分は住宅地型、商店街型、駅前型、郊外型の区分により決定して下さい。その区分に応じてある程度の患者層の想定もできますからその選定した地域でも個別事情も考慮しながら診療所規模の決定をして最終的な診療方針を決定して下さい。
歯科開業の場合には開業地での事業継続が前提となりますから開業地の選定については診療方針をしっかりと意識して立地を決定し、診療方針を具体化して診療のスタイルを作って下さい。
開業立地(それぞれにベストな開業立地を求める)
開業立地の選定は開業後の患者数に大きく関係するため重要なことです。よって、なかなか開業地を決定できないということにもなります。また、すばらしいと思う開業立地がそれぞれの先生にベストな開業地であるとも言えません。結局、開業してみないと正確には判断できないということになるのですが、多くの歯科医師は当初決定した開業地で診療をして実績をあげています。ますます、開業地選択に悩むところです。
- 診療方針(コンセプト)が決まると開業地も決めやすい
開業後、どのような診療をするのかという診療方針を決めてください。診療方針というと非常に形式的なことのように思われるかもしれませんが、実は開業後において診療に一本柱があることは種々の意思決定をなす場合に重要なことです。ご自身のなかで診療方針が決まると、それが目標となり現状から目標を達成する手段が具体化してきます。どんなことでも思い通りにいくほうが少なく、現実と目標との乖離をどのように埋めていくかが成功への近道だと思います。
開業立地についても、診療方針がしっかりしている場合には立地の良し悪しよりも開業後にどのような診療をするかということに意識が集中するので結果的に上手くいっているようです。 - 開業日を決めると開業地も決めやすい
意思決定する場合の方法として退路を断って考える場合があります。いつまでも可能性があると考えているとなかなか決定できないことでも、ある一定の決め事を自分のなかですることにより意思決定ができる場合があります。
開業立地についてもある程度の期間で決定するということを考えて下さい。
例えば開業日を決めると、現在の勤務先との関係(退職日)をどうすればいいかとか、融資のための担保を準備するためにご両親と打合せをしなければとか具体的な動きがでてきます。
開業して事業主としてやっていくことのなかで重要なことは意思決定することです。この意思決定ができないと自分がトップとなって事業をやることには向きません。事業主となる最初の意思決定として開業立地の決定を考えて下さい。 - 開業計画書を作成すると開業地も決めやすい
開業立地を決定する場合に、一つ一つの物件を検討して気に入る物件が出るまで検討していく方法もありますが、この方法だと実際はなかなか決めることができません。
そこで現状で提示されている物件で仮に開業するとした場合の開業計画書を作成します。テナントの状況や内装の見積、医療機器の見積を入手して資金計画を作成します。この資金計画を前提として収入計画、経費計画を作成します。
すなわち、ここで開業したらどうなるかということをシュミュレーションするわけです。一度、このようなシュミュレーションをすると次の開業地候補が出てきたときに判断がし易くなります。例えば、同規模で開業する場合、収入はどの位必要なのか、その場合は患者数目標をどの水準におけばいいのか、開業当初の新規患者数目標をどの水準におけばいいのか、この開業立地でそれだけの新規患者数が見込めるか等具体的な検討を当初の開業計画書との比較によりできますので、開業立地の点だけでなく開業後の運営も含めた判断がしやすくなります。
資金調達(開業準備一番の難関)
- 何からはじめればいいのか
開業時は初めてづくしでなにから手をつければいいのかわからないというのが実感ではありませんか?
資金調達は相手があることなのでこちらの一方的はことだけでは先に進みません。できることから着実に準備して下さい。
(1)自己資金の金額を確定して下さい。現状の預金やその他の金融資産等、実際に使えるお金がいくらあるかということです。
(2)親族からの援助等の金額を確定して下さい。援助の方式(借入・贈与)は別途考えるとして、金額を確定して下さい。
(3)担保不動産の大よその金額を算定して下さい。担保不動産の登記簿謄本をご準備下さい。
(4)保証人の確認をして下さい。できれば、ある程度の収入のある方、財産を持っているかたが適任です。
- 資金調達の目途をつけてから各種の契約
以上の準備をするとある程度の資金調達の目途がみえてきます。ここまで準備しておけばテナント契約、内装契約もしやすくなります。そこで、借入等の資金調達準備は開業前6ヶ月以上前から準備しておくことをお勧めいたします。 - 開業計画書を作成して現実的に検討
実際の開業地が決定したら開業計画書を作成して資金面から開業が可能か、開業後の運営に問題がないかの検討をします。この場合には、収入は低めに、経費は多めに計画して現実的な開業計画として検討することが重要です。くれぐれも回りの楽観的な意見に振り回されないようにして下さい。 - 借入金利よりは返済期間に重点をおいて
借入については一刻も早く返済したいというのが人情でしょうが、新規開業の場合には運転資金に余裕があることにこしたことはありませんし、設備や人員の追加等資金が必要なことがでてくる可能性は十分にあります。そこで、開業時の借入については月々の支払が少なくなるように返済期間は長めにすることをお勧めします。設備関係の借入の場合は15年、運転資金の場合でも10年位の契約にすることを検討して下さい。 - 借入だけが資金調達の方法ではない
金融機関からの借入以外の資金調達も検討して下さい。
(1)親族からの借入、贈与
親族からの資金援助の方法としては、従来は借入の形式がほとんどでした。これは資金援助が贈与税の対象とならないための処理でもありした。しかし、最近は税制改正により開業資金等については2,500万円までの贈与制度ができましたので、適用条件にあう場合には贈与による方式も増えてきました。(2)リースの活用
リースは返済期間の短い借入と考えていただければわかりやすいと思います。開業後のリース料を考慮しながら活用するとバランスのよい資金調達となります。
ユニット選定
歯科開業において、一番基本となる医療機器は歯科ユニットです。ユニット数により、患者数や診療点数、歯科医師数、スタッフ数も異なってきます。そこで、ユニット数による各種基準値をあげてご説明します。
- 配管数はユニット数プラス1
ユニット数が決定したら、配管数は1台分余裕を持って内装して下さい。後日、ユニット追加となったときの工事となると費用がかかります。もしものための対応ですが、開業後の増設希望は結構ありますので1台の配管プラスは無駄にならないはずです。 - 開業時は2台スタート
最近の開業がデジタルレントゲンの導入を前提にしていることから予算の関係上、ユニットは2台スタートが多いものです。予算に余裕がある場合で、1日患者数を25人以上目標にしている場合には3台スタートでも結構です。 - 1日平均15人を超えたら3台目の検討
1日平均の患者数が15人を超えたら3台目増設を検討して下さい。3台目が増設された時に1日患者数が20人に近づいていることが理想です。
特に新規開業時の9ヶ月目以降の再初診対策の時期となっている場合には是非、3台目の増設をして下さい。 - ユニット1台当り患者数10人
1日患者数が安定してきたら、ユニット1台当り患者数が10人となっているか確認して下さい。2台なら20人ですがそれ以上の場合には、月回数が落ちていないか?初診の予約を断っていないか?1日の診療時間が延びていないか?等を調べて支障がなければいいのですが、通常はどこかに支障が出てきます。
その対応としてユニットの増設を検討して下さい。 - ユニット1台にスタッフ1人
ユニット2台の状況で診療スタッフは何人いますか?3人以内なら平均的といえますが、4人の場合には各スタッフの役割を確認して下さい。また、1日患者数が15人を超えてユニットを増設する場合にはスタッフの増員かユニット増設のどちらが今後の患者数増加に有効か検討してから決定して下さい。
ユニット数 | 社数 | 比率 | 歯科医師数(人) | 保険点数(点) | 自費収入(円) |
---|---|---|---|---|---|
2台 | 27 | 18.8% | 1.0 | 179,191 | 728,659 |
3台 | 71 | 49.3% | 1.2 | 304,159 | 1,151,339 |
4台 | 29 | 20.1% | 1.5 | 460,982 | 2,028,798 |
5台以上 | 17 | 11.8% | 2.4 | 730,555 | 3,102,784 |
総平均 | 144 | 100% | 1.4 | 362,648 | 1,479,176 |
資料:橋本会計お客様データ
スタッフの採用
- 採用方針の決定
スタッフの構成をどのようにするかを決定して下さい。
① 歯科衛生士の採用の有無
②歯科技工士採用の有無
③常勤・非常勤の区分等が決まらないと採用条
件や募集広告をどうするかが決定できません。
特に、歯科衛生士の採用については新規開業の歯科医院であってもかなりきつい状況にありますから開業から半年位の余裕をもって対応することが必要です。 - 診療収入との関係
開業当初と開業後6か月以降では、1日平均の患者数にもかなりの違いがあります。開業当初は先生とスタッフ2名でも対応はできますが、1日患者数が15人を超えた頃からスタッフ3名の体制が必要になります。このように新規開業の場合には、患者数の増加を考慮してのスタッフ採用が重要です。
特に、開業後6か月以降に患者数が増加するポイントである再初診増加時の受入体制についてはご注意下さい。 - 面接の注意点
初対面の人と数回の面接でその人の良し悪しを判断することは実際には非常に難しいことです。新規開業の先生方にとっては尚更です。そこで、面接時には一定の判断の基準を設けて対応することが良いと思います。
例えば、患者さんとして接した場合はどうだろうかとか、会った第一印象がどうだろうかとかです。そのようなことを履歴書にある学歴や職歴を確認しながらその受答えの様子から判断して下さい。診療関係の技術的なことは実際に診療になってみなければわからないことがあります。 - 採用時の注意点
スタッフは面接時の採用条件を前提として採用を承諾していますので、実際の採用条件が面接時と異なっていることは問題です。まず、最低限の確認をして下さい。また、採用時に必要となる労働契約書、誓約書、身元引受書等の関係についても取りそろえて下さい。最初の給与支給時には、給与計算の内容について再度、説明するとお互いに誤解が生じなくなります。
スタッフについては、採用後3か月までの退職が非常に多いものです。そのほとんどの退職理由が面接時と実際の採用時の条件の違いによるものです。ご注意下さい。
新規患者(自然に増えるのか?)
新規開業の場合には、既存歯科と比較して再診、再初診の患者さんがいませんので開業当初の患者さんは新規患者さんにより構成されます。その新規患者さんが基礎となって治療完了後の紹介患者さんの獲得、その後の再初診というふうに開業後の患者数に大きく影響してきます。
逆に新規患者さんが少なくスタートしてしまうと紹介患者も少なく、再初診患者も少なくというように患者数がなかなか増えません。1年後の1日平均患者数を20人から25人位に目標を置くと、開業3ヶ月間の新規患者数の目標は200人から250人位必要です。月当り70人から80人というところです。
既存の歯科診療所の新規患者数の平均は月20人から30人ですから、通常の2倍から3倍を目標にすることになります。
よって、相当覚悟を決めてかからないと目標の1日患者数には到達しないということです。また、先生の診療所に来院する新規患者さんはほとんどが他の歯科診療所の再初診待ちの患者さんです。現在、通院している歯科診療所に対しての何らかの不満がなければ先生の診療所への来院はありません。このような、状況のなかでの新規開業となるので開業地の選択、診療方針、自医院の特徴の把握はしっかりとコンセプトを固めて準備にあたることが必要です。
新規開業時の新規患者数が計画通りに獲得できた場合には一安心です。ただし、新規患者数は時間の経過とともにだんだん減少していきます。これは、他の新規歯科医院が開業したり、診療圏内に対しての先生の歯科医院の占有率がある程度の水準に達したときにおこる減少です。よって、いつまでも開業時の新規患者数が継続するというように考えないで下さい
また、新規患者は初診から2ヶ月から3ヶ月で完了しますので、新規開業の場合には開業3ヶ月間はレセプト件数、1日患者数は増加傾向にありますが、その後は完了数と新規患者数のバランスにより患者数が増減します。
以上をまとめて考えると、1年後の目標とする患者数に達するためには一定期間内(通常3ヶ月)に新規患者数を目標数獲得することによりその後の患者数確保をするということになります。よって、1年後の患者数目標の達成は開業3ヶ月の新規患者数の状況とほぼイコールの関係にあると考えてよいと思います。
新規患者数の獲得については開業広告が重要です。その点は次号で説明します。
開業広告(開業3ヶ月新規患者数確保)
歯科医院の新規開業時も開業広告については、いままでの新規開業の状況を前提にすると新規開業成功の法則を導きだすことができます。それは、「新規開業3ヶ月の新規患者数がその後の患者数との関係が深い」ということです。この法則に沿った開業広告をすることが歯科医院の安定経営への近道と考えます。
具体的には、新規開業したことを診療圏内の皆様に認知していただき、来院していただく障害を少しでも取り去ってしまうことです。
- 新規開業を診療圏内の地域の皆様に認知していただくには
(1)開業前でもできる開業広告
建築開業にしてもテナント開業にしても開業前に診療所を通りかかった人たちはその場所に何ができるのかということについて非常に興味を持っています。事実、開業後に来院理由のアンケートを実施すると開業前の建設看板やテナント内装工事中の張り紙等により歯科診療所の開業を知ったとい患者さんが数多くいます。そこで開業前に診療所等に看板を出しておくことは非常に重要です。(2)開業を知らせる広告は範囲を広げて実施
歯科医院の患者さんは診療所から半径500メートルから1キロメートルの範囲からの来院だと言われています。よって、その範囲に絞って開業広告をしてもいいようなものなのですが、それでは範囲は狭すぎます。開業広告が限定的に行われると口コミの広がりも狭い範囲となってしまします。よって、開業を知らせる広告の場合には診療圏より1回りから2回り広い範囲で実施して下さい。具体的には「新聞チラシ」がいいと思います。(3)診療圏内の皆さんへの告知広告
実際に患者さんと想定する地域への告知の場合には、内容を具体的にして地域の方々へのごあいさつの気持ちで開業広告を考えることが重要です。具体的には「ポスティング」により個々の地域の方々を対象にして、内容は地域へのあいさつ、診療所の概要等をわかりやすく表現して下さい。ポスティングを受取った方々はそれを保管していることがよくありますので、ポスティングの体裁もしっかりとしたものにして下さい。 - 新規開業の歯科医院への来院に障害となることを取り去るとは
(1)今まで通院していた歯科医院から新規開業の歯科医院へ通院することへの遠慮を取り去ることが必要です。これは、患者さんに今まで通院していた歯科医院と自分の歯科医院の違いを開業広告を通じて理解していただく必要があります。例えば、通院することの利便性(距離、駐車場、診療時間、診療日等)や専門性(小児歯科、矯正歯科、インプラント治療等)を開業広告により表現することにより患者さんのなかで今までの歯科医院にはない新しい魅力を新規開業の歯科医院に感じていただくことです。
(2)歯科医師への親近感を早い段階で持っていただくには
通常は歯科医師と患者さんが会うのは治療のときです。一度会えばお互いにコミュニュケーションをとれますから親近感を付きやすいと思います。これを開業前にできれば来院についての障害を取り去ることができると思います。このことを開業広告に取り入れたものが「内覧会」です。地域の方々の新規開業の歯科医院に対する興味と歯科医師への親近感を持っていただくために開業前の土日曜日を利用して院内見学会を開催して下さい。先生もスタッフも診療できる体制でお待ちして治療のシステムや医療機器の説明をしながらいらした方々とコミュニュケーションをとって開院後の診療予約につなげて下さい。この内覧会の実施による副次的効果として地域内に開業前に口コミを発生させるきっかけになりますし、新聞チラシ、ポスティングとの相乗効果も出てきます。
自医院の専門性をいかに出していくか
診療方針をどう伝えるか?
診療の内容や技術水準を口頭で伝えるのは、難しいものです。特に医療関係においてはご自身のことを伝えることになるので照れくささも加わり余計難しくなります。しかし、患者側からすると歯科医院の診療内容を独自に知ることはもっと難しいことです。ましてや歯科医院の専門性についてはなおさらです。
よって、自医院の専門性を伝えるには診療所サイドでの積極的な働きかけが必要です。特に自由診療収入に力を入れる場合には診療方針に従って計画的な対応が必要です。
- 標ぼう科目
歯科医院の診療内容を第一に表現するものですので、実際の治療に沿った科目の標ぼうが必要です。 - 院内掲示
院内掲示は患者さんが待ち時間に何気なく眺めている状態での情報提供です。どのような掲示物や書籍を置くことにより院内の雰囲気も決まってきます。院長関係の情報提供(各種セミナーの修了証、経歴)は是非、行ってください。 - 販売品
専門性に関係する書籍、薬剤の販売等は一般に販売されていないか、入手しにくいものは専門性を感じます。また、歯ブラシでも患者さんの個人にあった種類をそろえているとよろしいと思います。 - 診療設備
歯科医院も現在、設備投資が盛んな状況となっています。患者側から見ても常に最新の設備投資をしていると最新の治療環境を目指している診療所だなと感じます。デジタルレントゲン、CAD・CAM、CT 等設備投資金額が多額な設備が増えてきましたが、治療が早くなったり、苦痛が軽減されたりすることにより間接的ではありますが患者さんも治療水準が上がっていることを感じとるはずです。 - 料金表
患者さんは治療の内容は理解できなくてもそれが金額的に説明を受けると意思決定がしやすいものです。
治療の内容と料金がセットになった料金表の作成をお勧めいたします。 - HP
広告規制の関係で院外における広告物は一定の規制を受けていますが、HPは現状のところ広告規制の対象外となっていることから歯科医院の広告媒体としてはかなり有効性がありあます。
また、治療内容の専門性を出す上でも効果的な媒体です。そこで、HPについては電話帳に代わる位置づけから自医院の診療内容や専門性をアピールすることを目的として内容を検討してはいかがでしょうか。
まず、歯科医院の基本事項は当然のこととして治療のメインとなる項目にHPの大半を割く様なつくりにして自医院の特徴・専門性を十分にアピールして下さい。そのことが自由診療への取り組みにもつながるはずです。その治療のメインとなる項目が決まったら、そのキーワードで上位検索されるようにSEO対策を実施して下さい。
再初診対策
~開業6ヶ月目から1年目までの対応~
開業広告等により患者数が目標通り獲得できたなら、次は患者さんへの診療に集中して下さい。開業準備から開業3ヶ月目位までは、先生自身の診療を受けたことがない患者さんを中心にしていたと思いますが、今後は現在治療中の患者さんが治療完了して、新しい患者さんを紹介してくれたり、また、ご自身が定期検診や別の部位での再初診をすることになります。この再初診が初診時、それ以上に満足いただける治療ができたとすると先生の診療所への今後の継続率はかなり高まります。この最初の再初診への対応を「再初診対策」といいます。
- 再初診対策の前提
(1)開業時と同じに思えても状況は変化している
開業して6ヶ月目というと診療所内の状況もだいぶ落ち着いてきている頃かと思います。先生自身も院内のシステムもある程度安定化してきていると思います。ただし、また開業して間もないことから患者さんへの取組は開業時とそれほど変化がない目いっぱい対応している意識が強いと思います。
しかし、レセプト件数や1日平均患者数等は開業時と比べると増加して先生ご自身が考えている以上に状況は変っているはずです。例えば、
① 初診時のアポイントはすぐ取れますか
② 再診の患者さんのアポイントは週1回入りますか
③ 患者さん1人当りの診療時間は十分に取れていますか
④ 患者さんへの治療説明は十分にしていますか
以上の全てが開業時と同じようにはいかないと思います。スタッフも同じような状況にあると思います。(2)患者さんは更なる満足度を求めている
再初診で来院した患者さんは開業時に来院したときの良いイメージを前提に更なる満足度を求めて来院します。通常は開業時と同じ対応でも患者さん本人とすると開業時の満足度が高いと感じると思います。
よって、再初診時には更に満足度を高めるか満足度の内容を変えていくことが必要になります。(3)評判の良い歯科に通院していることの満足度もある
患者さんの心理はおもしろいもので自分が通院している歯科医院が評判が良くて混んでいるとは悪い気はしません。治療や対応がよければ満足度は更に上がります。よって、「再初診対策」にあっては治療面の対応が十分にとれることに重点を置いてください。 - 再初診対策の留意点
(1)患者数が増加しているときの対応なので「人・物」のチェックをする
人とは歯科医師・スタッフ数のことです。特に、開業時にスタッフ2名でスタートの場合には3人目の採用を検討することになります。また、物とは設備です。ユニット数2台スタートの場合には3台目の増設を検討します。このことにより、再初診来院による患者数の増加に対応します。(2)1日15人平均、開業6ヶ月目までに対応を検討する
検討の時期は、ユニット2台、スタッフ2名開業の場合には、1日平均患者数が15名を超えたら検討して下さい。また、6ヶ月経過時も同様の趣旨で検討をして下さい。順調にいけば、対策後1日平均20人から25人の平均患者数が達成できてきます。
歯科医師の採用
開業から初めて歯科医師を採用する場合の注意点をまとめてみます。
- 採用のタイミング
開業してしばらくは歯科医師1人の状態が通常です。しかし、患者数の増加や診療内容の多様化に対応するために自分以外の歯科医師がいたらと思うことはあると思います。具体的に1人の歯科医師での診療の限界点(採用する場合の目安)をしめします。(1)1日患者数が30人以上となったとき
1日患者数が15人を超えるとユニット2台でスタートした場合には3台に増設するタイミングです。その後は、1日平均患者数が30人までは3台、スタッフ3名体制で結構だと思います。
しかし、1日30人以上となり月回数が2回以下に減少したり、1回診療点数が500点を切ったりした場合には現状の状態では診療時間を延ばすしか対応が取れなくなります。この場合には、歯科医師を採用して月回数を2回以上に復活させたり、1回診療点数を500点以上に戻すようなことを検討して下さい。
この段階では常勤の歯科医師でなくても週3日位の勤務でよいと思います。(2)ユニットが4台になったとき(スタッフが4名になったとき)
患者数の増加に対応してユニット4台にしたのはいいが、実際は3台の十分診療はできておりユニットの増設が患者数の増加に結びついていない場合には歯科医師の採用を検討して下さい。歯科医師の採用によりアポイントが増加して月回数の増加につながれば診療収入の増加が見込めますから採算面でも大丈夫です。 - 歯科医師2人体制の落とし穴
患者数の増加に対応して歯科医師を採用したものの、以前より採算が悪くなってしまったということが結構あります。以前より増加した患者数を2人の歯科医師で2分するような診療体制になっている場合です。
特に常勤の歯科医師の採用の場合には注意は必要です。常勤歯科医師2人体制の場合には保険の患者数でいうと1日60人以上を目標にしておかないと歯科医師の採用により業績が一時的に悪化する場合があります。2人体制による診療が軌道に乗るまでは、1人のときより採算は悪化しますので当初より目標を高く持ってあたることが重要です。 - 最初は週3日位から採用
歯科医師の採用について、最初から常勤で希望通りの歯科医師がいればいいのですがなかなか難しいものです。かといって常勤者が見つかるまで待つというのもタイミングを逸することになります。まずは、夜間週3日位からスタートして下さい。その後は、曜日と時間を増やして対応するか、別の歯科医師で増やしていくかの検討をして下さい。
3台目のユニットの導入時期
開業後の設備投資のタイミング
現状の開業事例でいうと開業時の医療機器の構成はデジタルレントゲン+ユニット2台が一番多いパターンです。従来は3台スタートが多かったのですが、デジタルレントゲンを導入するケースが多くなり全体の医療機器への資金予算が多くなったことにより当面はユニット2台でスタートということでしょう。
一方、1年後の目標1日患者数を見ると1日25人から30人という先生が多いと思います。ここで、ユニット2台で1日25人から30人の患者さんの治療が問題なければいいのですが、多くの先生方は2台の場合1日患者数が20人を超えると診療の効率が悪くなるというお話をよく聞きます。事実、ユニット1台当りの患者数は10人位が平均です。(橋本会計経営資料より)
よって、ユニット2台体制で1年後に1日患者数25人から30人でスタートする場合は開業時の設備では目標の患者数に到達できない医療機器での開業になるということです。必然的にある時期にユニットを3台体制にしないと目標の患者数を達成できないことになります。
- 1日の患者数の状況で何が必要か見極める
1日患者数はいきなり25人とか30人になるわけではありません。例えば、月平均1日患者数が15人の場合には1日12人のときもあれば20人ときもあるというような状況でだんだん1日に人数が平均化されてきます。そこで、先生の診療所で20人とか25人になったときの診療所の状態をよく観察して下さい。受付が混んでいたのか、診察の待ち時間が長かったのか等どこを改善すれば1日20人がスムーズに診療できるかを良く見て下さい。この結果、目標の患者数に効率的に到達するためには、スタッフの増員かユニットの増設かを考えて、もし、ユニットの増設が効果的であるならその意思決定をして下さい。 - 1日15人平均が医療機器導入の決めどころ
ユニットの増設が目標の患者数への到達に有効であるとした場合は、月平均の1日患者数が15人になったら3台目の増設を検討して下さい。ユニットの増設を決定しても実際にユニットが納品されて診療できるようになるには1か月ほど時間を要しますので、ユニットが増設されたときに1日患者数が20人に近づいていると思います。 - 資金調達は時間との勝負
ユニットを購入のための資金調達にも時間を要します。自己資金の場合は問題ありませんが、借入となると開業まもないこともあり上手く借りれるかわかりません。この場合にはタイムイズズマネーですから、早く増設できる方法を選択して下さい。手続きがわりと早くできるということでここはリースによる購入がお勧めです。借入か有利かリースが有利かは資金的に安定したときの選択と考えて下さい。
広告(情報発信)
患者さんへの情報発信の中心は来院を促進するものが多くなることは当然ですが、それ以外にも継続的に情報発信をすることにより患者さんとの信頼関係が醸成され結果的に継続性が図れていきます。
- いきなりのリコールカードよりは定期的な季節の便りが重要!
年賀状は最低限のお付き合いのかたちであると言われています。しかし、歯科医院から年賀状を患者さんに出すという習慣はあまりないように思います。年賀状が来ないからといって患者さんが歯科医院に対して不快感をいだくこともないでしょう。診療行為の一環というべきリコールカードが患者さんに送られたときの患者さんの反応はどのようなものでしょうか?多くは診療時期をお知らせする連絡として事務的に感じていると思いますが、一部には「○○先生も大変なんだなー」と患者来院促進活動という感覚で感じていることも事実です。
このようなことが蔓延するようでは本来の定期検診活動も上手くいきません。患者さんとの信頼関係を築く一部としてお付き合いの前提ともいえる年賀状、クリスマスカード、暑中見舞い等の季節のあいさつを患者さんに出されたらいかがでしょうか。 - スタッフの増加、医療機器の増設は患者の注目を浴びる!
スタッフが新しく入ったとか、医療機器を新しく購入したとか、ユニットを増設したとかということは純粋に院内のできごとでありますが、患者さんとすれば自分がかかりつけの歯科医院の成長を間接的に感じるできごとです。また、今度入ったスタッフはどんな人だろうかとか、新設された医療機器はどんな治療に使うのだろうかとか興味があるものです。患者さん向けに院内の情報をお知らせすることによりさらなる親近感をつくって下さい。 - 院内新聞はスタッフの手作り感がいい!
院内作成のニュースレターはスタッフによる手作り感が患者さんとの親近感をつくり、コミュニュケーションを取るきっかけ作りになります。自医院の患者さんを対象にして個別具体的な内容にしてみてはいかがでしょうか。 - 院長の生の言葉は親近感を呼ぶ!
最近のHPやブログでそのHPの主催者(社長)の日常のできごとを発信することが行われています。HPの内容より本人のブログのほうが話題になっていることもあります。
歯科医院の患者さんにとっても院長について治療以外のことは知っているようで知らないものです。知らないからといって何も不利になるものではありませんが、このような情報発信は直接患者さんに訴えるものなので親近感を高める効果はかなりあります。